特集その３：甲州ワイン　ー日本のワインの原点、和の心と共に

甲州ぶどうの起源は古く、奈良時代にシルクロードを経て伝わったといわれます。鎌倉時代には山梨の地に根付き、江戸期には薬酒として広まりました。明治に入ると西洋の醸造法が導入され、本格的なワイン造りが始まります。長い年月を経て磨かれたその味わいは、まさに日本ワインの原点。2010年代以降は国際的なコンクールでも高評価を得ており、日本の誇りとして世界に羽ばたいています。

代表的な甲州ワインには、柑橘の香りと爽やかな酸味が魅力の「甲州白ワイン」、無添加製法で人気を集める「赤わいん」、祝いや乾杯にぴったりの「甲州スパークリング」、芳醇な甘みの「デザート甲州」などがあります。銘柄では「勝沼ワイン」「グレイス甲州」なども全国区の知名度を誇ります。料理に寄り添い、四季を映すように楽しめるのが甲州ワインの最大の魅力です。

甲州ワインは「和食と最も相性が良いワイン」として世界からも評価されています。果皮が薄く渋みが少ないため、透明感があり軽やかな口当たり。寿司や天ぷらなど繊細な料理を邪魔せず、むしろ旨みを引き立てます。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食とともに語られる存在となったのは必然といえるでしょう。ワインの世界における「日本らしさ」を体現する一本です。

山梨の名産といえば、きな粉と黒蜜の調和が絶妙な「桔梗信玄餅」。お土産として全国的に愛されています。また郷土料理「ほうとう」は、かぼちゃや根菜と太麺を煮込んだ滋味あふれる一品で、寒い冬に心身を温めてくれます。甲州ワインと合わせれば、地元の食文化が一層豊かに感じられるはずです。

歴史、文化、名産品――そのすべてが甲州ワインに息づいています。ワイングラスに注げば、透明感のある輝きが日常を特別な瞬間へと変えてくれるでしょう。山梨の大地と人々の情熱が結晶した甲州ワインを、ぜひ心ゆくまで味わってください。🍷